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しほんたいへいき

私本太平記(七)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(七)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 330,262 字 · 662 頁

青空文庫

――いや正季、季綱などは、この夕、すでに館の内に来て、正成がよぶのを待っていた。

やがて。

一同の席は広書院に変えられ、人出入りを断ち、燭は更けていた。――そして熟議をとげ終ったこの人々の影が、また赤坂城へもどって行ったのは、もう真夜中ぢかいころだった。

帰りしなに、正成から、或ることづてをうけていた正季は、城内へはいるとすぐ、妹の卯木の良人、服部治郎左衛門元成を、武者溜りからよびだして、

「なにかは知らぬが、兄上がお待ちしておいでになる。朝を待たず、こよいのうちにという仰せ。すぐ御本屋へ伺ってください」

と、立話で告げていた。

治郎左衛門元成は、いまではまったく、楠木家の家族のひとりに溶けこんでいる。

卯木とのあいだには、四ツになる観世丸という子も生し、妻とその子は、水分ノ館に養われていたので、正成とともに、戦場へおもむいたり、都にとどまったりする期間はあっても、郷へ帰って来れば、帰るたびにきわだって大きくなっているわが子を見るのが愉しみの一つであった。――そしていつか数年は夢と過ぎていたここちだった。

「はて、何の御用だろう? この深夜に」

と、彼は思った。