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しほんたいへいき
私本太平記(七)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《私本太平記(七)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 330,262 字 · 662 頁
日頃の戦場とは大いに違う。それらの仔細は、そなたにもわかっているはず」
「それはもう、よう申しきかせたのではございますが」
「ききわけないのか」
「母のことばでは」
「……よし。わしから明朝言ってきかせよう。正行も十五、男の子だ、そうあっても一概には叱られまい。ところで……久子、卯木から何か聞いたか」
「いえ、まだなにも伺ってはおりません」
「じつはの。……妹婿の治郎左は、あすの発向の列から外すことにした」
「それはまあ」
「よかったと、そなたも思うか」
「わたくしからもお願いしたいほどでした。ありがとうぞんじまする。さぞ卯木さまも」
「いや夫婦にとれば、ただよろこびにもしておれまい。ひとの誹り、うしろ指、さらには前途、芸道の修行も長くけわしかろう。だが、ここは絆を断って卯木夫婦を武門の外へわざと勘当同様に追いやったのだ。……そなたも情にひかれてはならぬ。正成が立ったあとでは、素気なく、笠一ツずつを持たせて、この郷から早よう追い出してやるがよいぞよ」
その晩は寒かった。
わけて屋の棟も下がるという丑ノ刻をすぎると、山里のつねでもあるが、五月というのに冬のような気温の急下に肌もこごえそうだった。