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しほんたいへいき

私本太平記(七)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(七)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 330,262 字 · 662 頁

青空文庫

と、義助の手もとにも、まだ的確な情報はないような返答だった。――で、おそらくは、と義貞をめぐる幕僚たちも、こうした説にかたよっていた。

「きのうの風雨には、お味方もさんざんになやまされましたが、敵とて、おなじことだったでしょう。……わけて尊氏の海上勢は、播磨灘の風浪にさえぎられ、しょせん、室ノ津は立ちえなかったにちがいない。……とすれば、はやくても、沖に影をみせるのは、あしたのことか」と。

かくて、午ごろ。

「ざっとではござりますが」

と、里見、綿打の二奉行が、全兵力の略簿を作って、義貞へ呈しにきた。

みれば、総締め、

二万騎

にもすこし欠けていた。

当初、六万と号していた官軍である。はやくも脱落者が多かったのだ。しかし義貞は、

「よしっ」

と、それに大きくうなずいた。なお残っているほどな者は精兵中の精兵だ。ござんなれと、彼の腹はできたのである。

すると、午やや過ぎ、義助から早打ちがあった。

「尊氏の水軍は、きのうの風雨も冒して室を出たらしく、もう先駆の船影が、明石海峡のくちまで来つつある由です」と。

「すわ」

と、陣はいろめき立った。思い思いな所へかけて、沖を見やる人々の顔はいずれも硬ばっていた。