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しほんたいへいき
私本太平記(七)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《私本太平記(七)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 330,262 字 · 662 頁
「なんで退くのか」
「みすみす岸を踏みながら、俄にまた、退き鉦とは」
「わが将軍(尊氏)も、臆し過ぎる」
「これほどな戦、序の口、二百や三百の兵が打たれたとて、そのたびに退き鉦を鳴らしていたら、しょせん、敵前への上陸など思いもよらん」
「しかも、犠牲は犠牲のままとなッて、あえなく、犬死させることではないか」
先陣の五百余艘――
その艨艟の中にある細川定禅の船上では、定禅をめぐッて、四国党の諸将が、はなはだしく、憤慨していた。
もっと、ことばを露骨にしていえば、つまり尊氏の指揮がなッていない! ということであったらしい。
これは、むりもないことにも見える。
せっかく接岸して、しかも二百余の味方はすでに殲滅されてしまったのだ。――ならばいッそ息も抜かずに、五百、七百、あるいは千、二千――と犠牲を惜しまず、渚を部下の屍で埋めても、叱咤をつづけるべきであったろう。それでこそ初めて上将の指揮というもので、突破の口が開けるかもしれないのである。
――だのに、どういうわけか、尊氏は、そのかんじんな機に退き鉦を打たせ、自身のお座船以下、数千艘を、みな意気地なく、沖へ乱れ退かせてしまったのだ。