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しほんたいへいき
私本太平記(七)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《私本太平記(七)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 330,262 字 · 662 頁
「いや、敵の腹はどうあるとも、末期に、このゆとりをえたのはありがたい。見おさめの落日も心しずかに眺められる」
「兄者! ……」と、正季は突として何かに胸をつかれたらしく。「長いあいだ、わがままを申しました。かくのごとき末路へお誘いいたしたのも、私のせいだったかもしれません。血気、やむにやまれぬ我武者の私の」
「ばかな」
冷たいほどな正成の唇もとだった。
「かほどな大事、たれに引かれてするものぞ。正成をしてこうさせたものがあるとすれば、それは正成が生れると共に身のうちに持たせられていたものだ。そちのいう、やむにやまれぬものだった。けれどこの国に生れ、いささか、この国に報いえた生とすれば、惜しくはない。……いや、時移してはいられまい。正季、一蓮同行の輩、ここに在るは何人か」
「五十一名にございまする」
見わたしながらそう答えた。どの顔も、静かであった。余りにも澄みきって、非情にすら見える面色が一様に覚悟のていで居流れていた。
「五十一名か」
その一人一人を、正成は傷ましげに眺めやった。もったいないと、心でおがむかのような眸だった。
「可惜、よき世に生れ合せていたら、みなひとかどの男、子にも妻にも祝福されていたろうものを」