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しほんたいへいき

私本太平記(七)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(七)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 330,262 字 · 662 頁

青空文庫

もう、こんりんざい、弓矢は手にせず、一沙門の生涯を、みほとけと和歌の道にと、そうお願いして、父の皇からもみゆるしを給わっていたのですが、こうなりましては」

「ほんに、どうしたらよい世なのでしょう。世の中を恨むべきではない、人間というこの魔性の者をみずから裁けと、あなたはさっき仰っしゃったけれど」

「それが、どうにも、できないんです、ことばではいってみても。……きょうもこれへ伺うまでは、宮中にいたのですが、人々の狂癲ぶりをみるにつけ、あさましいとも嘆かわしいとも、いいようがありません」

「そして、主上のご動座は、今夕ですか」

「ええ、お密かに、御車で皇居を出られ、途中で輿にお乗り換えあって、叡山へ、というお手順とか。いずれお姉宮へも、武者どもが輿を持ッて、お迎えにやってまいりましょう」

「でもまだ、こちらへは、なんのお知らせも来ておりませぬ」

「いきなりですよ。どうして、公卿たちにそんな道すじを踏んでいる余裕などあるものですか」

「……では、いやおうなく、私も」

「はや、おしたくなされませ。せめて、離しともないお持物だけでも身に持って」

客の僧は、後醍醐の御子、尊澄(宗良親王)であった。