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しほんたいへいき

私本太平記(七)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(七)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 330,262 字 · 662 頁

青空文庫

――が、当夜。

宵すぎてからの妖しい一群の脱出者には、全然、気づいていなかった。

そのうちの主たるお人は、女房衣をあたまから被いていたので、たれかは、夜目にもちょっと分らなかったが、しかしすぐあとに起った騒動によって、それが、後醍醐の君であったのは疑いもない。

じつに思いきった行動に出られたもので、薄氷を踏み、つるぎの刃を渡るにひとしい、冒険だった。

もしこれが、失敗したら、どうなったかは、想像に余りがある。――それゆえに、外部とのしめしあわせも、充分、抜かりのない用意のもとにおこなわれたことではあろう。――思うに、ひるま、新勾当ノ内侍と称して外出した女性たちのうちには、准后の阿野廉子もまじっていて、すでに彼女はさきにここを落ちていたものであったろうと想像される。

そして、女装された後醍醐のきみには、細川ノ権大納言光継と二、三人の蔵人がつき添い、また、酒商人に化けていた男と、怪武士の景繁とが、お手引きの案内にたって、御所の裏門附近の築土を、彼らの背なか梯子で、お越えになったものらしい。

すでに、この夜。築土の外には、数名の人影が、そまつな板輿、はだか馬などを寄せて、待っていた。