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しほんたいへいき
私本太平記(七)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《私本太平記(七)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 330,262 字 · 662 頁
門
「どうだこの姿、お地蔵そっくりだろう。じつは裏山の網引き地蔵尊のお使いで急に西の旅へ立つ。頼春どの留守をたのむぞ。わけてあの小娘に油断するな」
とばかり、冗談に言いまぎらわし、たそがれの山門から飄として飛び出て行った。
門
官軍は、十一月の二十五日、三河の矢矧まで来て、はじめて足利勢の抵抗をうけた。
海道の合戦は、この日に始まり、交戦三日後には早やそこの矢矧川も官軍二万の後方におかれていた。そして序戦にやぶれ去った足利方の先鋒高ノ師泰は、鷺坂(遠州見附の北)までなだれ退いて、
「残念だが、味方の来援を待つしかない」
とし、初めからおおうべからざる敗勢だった。
師泰らが、無念がったのも、むりではない。彼らは、すでに当初、
「矢矧川から西へは一歩も進んではならぬ」
という軍命令の下におかれていたのである。当然、こんな制約下では士気もあがらず、積極的な作戦もとれなかったにちがいない。――そのため、まもなく仁木、細川、今川、吉良などの味方を加えるには加えたが、鷺坂のふせぎもならず、またぞろ、駿州の手越河原まで敗退するの余儀ない破目になってしまった。
官軍は強かった。