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しほんたいへいき
私本太平記(七)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《私本太平記(七)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 330,262 字 · 662 頁
「あれ、御簾が」
「蔀が」
と、殿上でも、舎人や蔵人たちが風にもてあそばれ、てんてこ舞いな姿だった。雨のないのがまだ見つけもので、木の葉まじり、大屋根の檜皮までが空に黒いチリのつむじを描きぬいている。
こんなところへの頻々な取沙汰だった。
「朝まだき、暗いうちに、足利の宰相(参議)をはじめ、六波羅じゅうの勢は、東へ立った」
「はや六波羅には、武者らしきものはひとりもいぬと申す」
「総勢千七、八百騎とか」
「いやいや、それが大津越えにかかる頃は、尊氏を慕うてあとより追っかけ加わる勢もおびただしく、いつか三千余騎にもなっていたという」
「いずれにせよ、尊氏は、八座の宰相の身にありながら、君恩もわすれ、朝命も待たいで、無断、東下をあえてしたことは確かとみゆる」
「不忠不逞な臣」
「断乎たる御処分な降されねばあいなるまい」
公卿口の姦しさ。殿上いずこの間でも廊でも紛々たる騒めきである。
公卿ばかりでない。新田、名和、結城などの武臣も、ひっきりなしの参内だった。――わけて千種忠顕は早々に出仕して、上卿の面々とともに中殿の御座へまかり出ていた。
「皇威にかかわります。勅使を立て、尊氏の意をただすべきでございましょう。