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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(三)酒屋火事

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(三)酒屋火事(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 146,725 字 · 298 頁

青空文庫

「ヘエ――、どんな面白いことで?」

「あの松五郎は一と通りの男じゃねえ、三道楽の修業が積んで、人間を叩き上げているから、あれほどの娘を殺されて、ただで引込むはずはねえ」

平次はそこまで睨んでいたのです。

「金にする積りで?」

「それも五十や百の金じゃあるめえ」

「ヘエ――、太え親父があるものですね」

「太いか細いか、もう少し経ってみなきゃ解るまい」

平次はなかなか帰る様子もありません。

それから半刻(一時間)ばかり。

「おや、相模屋の主人が来ましたよ、番頭と二人で」

ガラッ八は平次の袖を引きます。

「静かにするんだ」

三人は平次を中に、濡れ縁に腰を並べました。

中は六畳の一と間、検屍の済んだ死骸は、まだ棺にも納めず、煎餅蒲団の上へ北枕に寝かし、二枚折屏風を逆様に、手習机を据えて駄線香をフンダンに燻しながら、松五郎はその前に神妙に膝小僧を揃え、ポロポロと涙をこぼしては、お茶に紛らせた湯呑の冷酒を呷っております。

「相模屋さんがお見えだよ、お前さん」

お辰は後ろから声を掛けました。

「何を?」

振りあげた顔の前へ、もう相模屋喜兵衛は恐れ入って坐っていました。年の頃五十七八、大町人らしい恰幅で、後ろに従えた優さ男の茂七とは、対蹠的に堂々としております。