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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(三)酒屋火事

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(三)酒屋火事(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 146,725 字 · 298 頁

青空文庫

八

判りましたか」

稲葉屋の暖簾をくぐると、目ざとくも見付けて、傷だらけな千之助は飛んで出ました。

「面目次第もないが、今度という今度は兜を脱ぎましたよ」

平次の勢いのなさ、雇人達の耳を恐れて通された奥の四畳半、佐七と千之助を左右にして額を叩きます。

「と、おっしゃるのは?」

「吉五郎も、長次郎も、要助も、間違いもなく潔白ですよ。この平次の首を賭けてもいい」

「ヘエ、するとどんな事になります」

「下手人は思いも寄らぬ人間でしょう。江の島で一緒に泊ったのはあの三人だけとすると、悪者はその晩島に泊っていた、見ず知らずの泥棒だったかも知れず、前から漁師の家へでも潜り込んでいた、お前さんを狙っている者の仕業かも知れません」

「…………」

「それから、片瀬の宿屋も一応は捜し、土地の人にも逢って来ましょう」

平次の考えようは真剣でした。こうなれば、是が非でもといった意気込みがほの見えるのも、職業的な強さです。

「一年前のことで、今頃行っても覚えているでしょうか」

と佐七。

「なアに、旅籠屋は宿帳があるし、騒ぎのあった時の事は、一年二年経っても誰でもよく覚えているものです。それに、下手人の人相に人と異ったところでもありゃ、逃がしっこはありません」