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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(三)酒屋火事

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(三)酒屋火事(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 146,725 字 · 298 頁

青空文庫

平次とガラッ八は、寺男に提灯を持たせて、墓地の中へ入って行きました。寺男は何分新米で、何にも判りませんが、それでも、今日人の詣った墓はすぐ判りました。

「ない、――その武家の羽織は、袷とは不似合の山の入った羽二重だったというから、いずれ拝領物を一生着るといった肌合の人だろうが、丸に二つ引の定紋を打った墓で、今日詣ったらしいのが見当らないのは不思議じゃないか」

平次は一方ならず落胆した様子です。

「これは? 親分」

「その紋は丸に三つ引じゃないか――おや、墓が濡れている、――丸に三つ引の紋を、鶴源の女中が、ありふれた丸に二つ引の紋と間違えたかも知れない。こいつはおかしいぞ」

平次は横手へ廻って俗名を読むと、もう一度寺へ取って返して、住職を叩き起しました。

「神田の平次殿と言われるのか。それは御苦労なことじゃ。――あれは、御旗本で御役高共四千五百石の大身、大目付までせられた、安倍丹後守様の御墓じゃ。二年前に亡くなられて、当代は安倍丹之丞様、お若いが、先代に優るとも劣らぬ智恵者で喃、早くも御役付、御小姓組御番頭に御取立、御上の御用で半歳ほど前から駿府へ行っておられる。