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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(三)酒屋火事
野村 胡堂
線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(三)酒屋火事(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 146,725 字 · 298 頁
「お、正三郎」
「これが御家の獅子身中の虫でございます。私の預かりました手文庫の封を切るように、殿からお頼まれして、フト御家の乗取りを思い付き、改めて御用箪笥から抜いて、二品の紛失を公儀に訴え、後日自分の手柄にする積りだったのでございましょう。仲間はお勝、あの女狐は一通りの悪者ではございません」
「…………」
「これにて御家は万々歳、安倍家の栄えは目に見えます。ゆめゆめ奥方と御仲違いを遊ばしませぬよう。――清左衛門はこれにて永の暇を頂戴いたします。さらばでござります」
立上がる清左衛門。
「これこれどこへ行くのだ、清左衛門。誰もその方に暇をやるとは言わぬぞ」
丹之丞は驚きました。先刻までは邪魔にした家来ですが、今となっては、この名臣を手放すわけには行きません。
「恐れながら、人の去就には天の命がございます。三世かけた主従の縁も、尽きる時はいたし方もございません。――打ち明けて申せば、私はもう武家奉公が厭になりました。丹後守様の御墓を守りながら、――手習師匠などいたして、独り者の気楽な世を渡りましょう」
「清左衛門」
奥方はまた新しい涙にひたっておりました。こうなっては、丹之丞にも、もう引留める言葉はありません。