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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(三)酒屋火事

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(三)酒屋火事(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 146,725 字 · 298 頁

青空文庫

「変っているだろう」

そんな事を言いながら、三人は芝山内から麻布狸穴へ、うらうらとゆらぐ、街の陽炎を泳ぐように辿っていたのです。

狸穴に着いたのは昼少し過ぎ、この辺は山の手の盛り場で商い家も多く、手軽な見世物や、茶屋、楊弓場などのあった時代ですが、一歩裏通りに入ると、藁葺のしもた家が軒を並べ、安御家人や、隠居屋敷、浪人暮しなどの人が、ささやかな畑を拵えて、胡瓜や南瓜を育てているといった、一種変った風物が特色でもあったのです。

「お待ち申しておりました、旦那」

狸穴のとある家、生垣の前に、土地の岡っ引が待っておりました。狸穴に縁を持たせて鼓の源吉というポンポンした四十男。

「鼓の親分、私も目学問をさして貰いますよ」

平次はへり下って肩の手拭を取りました。

「いいとも、銭形の兄哥が来てくれると、俺も心強いというものだ」

あっさりした口はききますが、何か腹の底に蟠りがないではありません。

「死骸は?」

と笹野新三郎。どこからともなく散り残る花弁が飛んで来て、陰惨な空気などは感じられませんが、建物に沿って右に曲ると、風の吹廻しか、線香の匂いがプーンと来て、さすがに職業的な緊張を覚えさせます。