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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(三)酒屋火事

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(三)酒屋火事(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 146,725 字 · 298 頁

青空文庫

平次はそれ以上の事に気が付いている様子です。源吉は大急ぎで――濡れ残る生垣が、咄嗟の間に乾くのを恐れでもするように、一握りの懐紙を生垣の中に突っ込み、滅茶滅茶に濡れた木の葉の間を掻き廻すと、

「あッ」

紙はあるかなきかの、薄桃色に染められるではありませんか。

「主人はそこで殺されたのさ。跣足男がその死骸を引っ担いで来た。――それは間違いのないことだ。跣足の足跡が、――行きは浅くて帰りが深い。――死骸を引っ担いだためだ」

何という慧眼、――が、こんな事は平次にとっては朝飯前のことでしょう。

「何だって、あんなところへ連れて行って殺したんだ」

と笹野新三郎。

「そいつが判れば――旦那」

平次は考え込んでしまいました。

ともすれば逃出しそうにする藤助を、ガラッ八の馬鹿力に預けて、平次と源吉と、それから笹野新三郎は、家の四方をグルリと一廻りしました。

何の変ったこともありません。が、たった一つ、藁屋根の頂点に、どこから飛んで来たか、虫喰いの稽古矢が一本、天矢が落ちて来た恰好に、箆深く突っ立っているだけ。

平次はしかしそれに見向きもせず、門から出ると、いきなり生垣の向う、板塀繞らした隣の家へやって来ました。