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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(三)酒屋火事
野村 胡堂
線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(三)酒屋火事(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 146,725 字 · 298 頁
「御免下さい」
「ど――れ」
響きの音に応ずるように、物々しい返事と一緒に戸口の障子を開けたのは、四十五六とも見える青髯の武張った浪人、門札を見ると、岩根半蔵と唐様の四角な文字で書いてあるのも人柄が忍ばれます。
「お隣に、とんだ騒ぎがありまして、お邪魔をしますが――」
「福島殿に間違いがあったそうだな」
岩根半蔵という隣人は何もかも心得ている様子です。
「お気の毒なことでございました。ところで、何かお気付のことはございませんか。昨夜から今朝へかけて、物音とか、人声とか――」
「気が付かんな。――もっとも俺は名題の寝坊だし、奉公人というものが居ないから」
岩根半蔵はニヤニヤします。覗くともなく見ると、なるほどたった二室の浅まな住居で、雇人などを置く場所があろうとも思われません。
「平常、お隣とのお付合はございませんか」
「ないなア」
「お隣同士で、顔が合えば口をきくとか、挨拶をするとか――」
「俺は――死んだ人の事を悪く言っちゃ済まんが、あの、福島嘉平太というのが大嫌いでな。高慢で頑固で、けちで」
「…………」
死んだ人の事を言っちゃ済まぬと言いながら、これはまた歯に衣着せぬ物の言いようです。