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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(三)酒屋火事

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(三)酒屋火事(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 146,725 字 · 298 頁

青空文庫

「何?」

「こいつは近頃の大捕物になりますが、組子の用意をお願いいたします」

「何人ぐらい?」

「相手の腕が判りませんが、まア、十人もあれば」

「そんな事で大丈夫か」

「あんまりお膝元を騒がせるでもありません」

用意は疾風迅雷でした。銭形平次が捕り頭で、手下の組子が十人、わざと真昼を選んで、八方から一挙に岩根半蔵の浪宅を囲んだのは、それから一刻(二時間)ばかり後のことです。

「御用ッ」

「岩根半蔵、神妙にせいッ」

一隊は表の入口から、一隊はお勝手から、一挙に疾風のごとく飛込んだのです。

「えッ、何を馬鹿なッ、御用呼ばわりをされる覚えはないッ」

起ち上がった岩根半蔵。

「御用ッ」

正面から飛付いた一人は、半分食いかけの、昼飯の茶碗を目潰しに叩き付けられてのけ反りました。続く一人は、額で番茶の土瓶を打ち割り、後ろの一人は、一本背負でモンドリ打たせられます。

「その方どもに縛られる俺ではない、寄るな、寄るなッ」

早くも引抜いた一刀、バラリと一文字に払うと、続く二三人、薄傷を負って将棋倒しに――。

「御用ッ」

「神妙にせいッ」

あとは僅かに二人三人、それを冷たい笑みにあしらって、岩根半蔵ズイと外へ出ます。