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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(三)酒屋火事

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(三)酒屋火事(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 146,725 字 · 298 頁

青空文庫

ました。

「三軒揃って酒屋は変じゃありませんか。そのうえ三軒とも薪と炭を商い、三軒とも夜中過ぎの放火だ」

「フム」

「それから、三の日と八の日を選ったのもおかしいじゃありませんか。御縁日か稽古日じゃあるまいし」

「面白いな、八。他に気のついたことはないか」

「そんな事をするのは、酒嫌いな奴でしょう、どうせ」

「ハッハッハッ。お前の智恵はそんなところへ落着くだろうと思ったよ――とにかく行ってみよう。笑いごとじゃない。――お前も来るか」

「ヘエ――」

ガラッ八は疲れも忘れた様子で、忠実な犬のように従いました。

三村屋の焼跡は、見る眼も惨憺たる有様でした。まだ板囲いも出来ず、灰も掻かず、ブスブス燻る中に、町内の手伝いと、火事見舞と、焼跡を湿している鳶の者とがごった返しております。

「親分、亭主の安右衛門が来ましたよ」

ガラッ八が袖を引かなかったら、平次もうっかり見遁したことでしょう。汗と埃と、煤と泥と、そのうえ血と涙とに汚れた安右衛門の顔は、まことに、日頃の寛闊な旦那振りなどは、薬にしたくも残ってはいなかったのです。

「三村屋さん、災難だったね」

「お、親分さん――御覧の通り、私も三十年の働きが無駄になりました。