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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(三)酒屋火事

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(三)酒屋火事(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 146,725 字 · 298 頁

青空文庫

銭形平次が乗出したのは、この物騒千万な放火魔を挙げて、江戸の町人達の枕を高くさせるためですから、ケチな物盗りや、怨みの人殺しなどをあさるよりは、よっぽど緊張しているのも無理のないことでした。

「親分、見つけましたよ」

「何だ、八」

「火付け道具」

「どこにあった」

「炭俵の下ですよ。――あの通り、庇へ火が付く頃、炭俵が崩れて、火付け道具を焼き残したのでしょう」

八五郎の指さす方を見ると、裏の物置のあたり、焼け崩れた炭俵の下に、焚き付けの脂松に油綿を縛ったのが、燃え尽しもせず、踏み消されたままになっているではありませんか。

「浜町の大黒屋の小火でも、それが見つかったんだろう」

「その通りですよ。親分」

「放っておけ。――誰が先に気がつくか、誰が持って行くか、少し気長に見張っていてくれ」

「ヘエ――」

ガラッ八は少し役不足らしい顔でしたが、それでも、素直にうなずいて見せました。

不意に――

「竹松! お前は、お前はまア――こんな情けない姿になって――」

後ろで爆発する声があります。

振り返ると、油で煮締めたような四十五六の古女房が、取乱し切った姿で、赤黒く焼け爛れた、小僧の死体を抱き上げているのでした。