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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(三)酒屋火事

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(三)酒屋火事(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 146,725 字 · 298 頁

青空文庫

「俺はここに居る。手前は、大廻りに横町からあの路地の向うへ出ろ」

「…………」

八五郎はこんな事には馴れておりました。事態容易ならずと見ると、日頃の饒舌を封じて、平次の言うままに、路地の向う側へ廻ります。

しばらく時が経ちました。待っているものには、二刻三刻のように思いましたが、実は、ほんの、煙草二三の暇だったでしょう。

ポ――ッと路地の中を染める火。

四軒目の酒屋、岸屋半助の裏庇が燃え出したのです。

「御用ッ」

銭形平次は飛込みました。が、曲者は早くも身を翻して、路地の向う側へ、真に飛鳥のごとき素早さです。

「野郎ッ。待っていたぞ」

そこには力自慢のガラッ八が、手を唾だらけにして待ち構えていたのです。

「八、頼むぞ。俺は火を消す」

「合点だッ」

曲者と八五郎は四つに組んで、路地の中を、コロコロと転がっております。

この騒ぎを聴いて、バタバタと戸の開く音。

*

曲者は、家主の倅周助だったのです。

番所へ送った帰り、暁の霜を踏んで、ガラッ八は問いかけました。

「今度ばかりは解らない、絵解きをして下さい、親分」

「何でもないよ。周助の家に、付火道具がなさすぎたのが怪しかったのさ」