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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(二)八人芸の女

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(二)八人芸の女(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 144,562 字 · 291 頁

青空文庫

――それを亭主のお前が知らなかったはずもない」

三輪の万七は鼻であしらいます。お咲に男のあったのを、幸七が知っていたか、知らなかったか、そんな微妙な関係が、今となっては重要性を帯びて来ているのでしょう。

「三輪の兄哥、とんだ出しゃ張るようだが、幸七とは餓鬼のうちから懇意な仲だから、悪く思わないでくれ。決して兄哥の仕事を邪魔する積りじゃないから」

平次は素直に打ち明けて、自分の立場を諒解して貰う積りでしょう。

「そいつは知らなかったが、――いいとも、外に下手人がありようはずはないから、気の済むまで見て行ってくれ」

三輪の万七は、もう幸七を縛るに決めている様子です。

「それじゃ――」

平次は幸七に案内させて、奥へ入りました。続いてガラッ八の八五郎。これは満腔の敵意を、反っくり返った鼻と、山のごとく聳えた肩に見せて、万七の空嘯く前を通ります。

縁側へ顔を出した平次――。

「あ、これはひどい」

さすがに顔を反けました。便所寄りの戸袋の傍、一枚開けた雨戸の中には、碧血に染んだお咲の薄雲が、虚空を掴んだ形で死んでいるのです。

寝巻の上に引っかけたらしい袢纏や、血に濡れた素足などを見ると、暁方小用に起きて、ここで不意にやられたものでしょう。