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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(二)八人芸の女

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(二)八人芸の女(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 144,562 字 · 291 頁

青空文庫

銭形平次捕物控

一

一

「親分、とうとう神田へ入って来ましたぜ」

「何が? 風邪の神かい」

その頃は江戸中に悪い風邪が流行って、十二月頃から、夜分の人出がめっきり少なくなったと言われておりました。

「いえ、風は風だが、あの『疾風』と言われている強盗で……」

「どこへ入ったんだ」

「神田も神田、新石町の大黒屋で」

「ヘエ、そいつは近過ぎて知らなかったよ。いつだい」

「昨夜――と言っても暁方だったそうで、盗られた金は三百両だが、後の祟りが恐ろしいから、店の者一統に口留めして、おくびにも出さないことにしたんで」

「手前はそのおくびをどこで聞いた」

「朝湯へ行くと、湯を貰いに来た大黒屋の下女が、これは極々の内証話だから、誰にも言わないように――って、ペラペラ喋っていましたよ。口留めされるとかえってウズウズして、言わずにいられないんだね、もっとも、泥棒の汚した板敷や畳を掃除するのに、湯を沸かす暇がないという言い訳代りに、湯屋のお神さんを相手に、内証話を一席やった積りだろうが」

こんな事の聞込みにかけては、ガラッ八の八五郎、天才的な早耳でした。

「それは知らなかった、――外の事なら知らん顔もするが、『疾風』