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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(二)八人芸の女
野村 胡堂
線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(二)八人芸の女(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 144,562 字 · 291 頁
銭形平次捕物控
一
一
「親分、世の中はだんだん悪くなって来ますね」
ガラッ八の八五郎は妙なことを言い出しました。鼻毛を抜いて、手の甲に一本ずつ植えて、それを、畳の上でプーッと吹くといった、太くて粗い神経の持主の言葉ですから、この――世の中が悪くなった――と言ったところで、大した真剣味はありません。
「たいそう考えちゃったね。何が一体悪くなったんだ」
平次は日本一の機嫌でした。手掛けた事件は全部片が付いたし、女房のお静は若くて綺麗だし、秋の陽は申分なく晴れたし、一年三百六十五日、こんな好い心持の日は滅多にあるものではありません。
「第一に米が高え」
ガラッ八は不器用らしく指を折りました。
「可笑しなことを言うぜ。米の高えのを気にするようになれば、人間も一人前だ――手前なんざ、たった一人口で、下の婆さんに炊いて貰っている身体だ。どんなに暴れ食いをやったって一日一升とは食う道理はねえ」
「仰せの通りだが、湯へ入っても、髪結床へ行っても、米の高え話を聴かされると、あっしのような不自由を知らねえ人間も、ツイ人付き合いに、同じせりふが言ってみたくなるじゃありませんか。――憚りながら米なんざ、両に一升したって驚く八五郎じゃねえ」