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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(二)八人芸の女

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(二)八人芸の女(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 144,562 字 · 291 頁

青空文庫

四

――人の手錠を眺めながら、そんな話をするのは殺生だって」

「そうだろうとも。呆れた奴だ」

口でそう言いながらも、平次はかなり面白そうでした。ガラッ八をやった目的は、案外その無法な調子を役立たせるためだったかも解りません。

四

その晩、久兵衛の娘お民は、親の家の前で殺されました。

出羽屋に奉公しているうち、主人伝右衛門と倅伝次郎の気に入り、近々祝言までさせようという話のあったお民です。

晩のお仕舞が済んだ後で、つまらない用事を思い出し、いつものように、ツイ五六軒先の町裏の、自分の家へ駆けて行ったのが、町角を曲った薄暗がりで、後ろから頸筋を斬られて打っ倒れたのです。

恐ろしい悲鳴に駆けつけた人達、血の海の中に、のた打ち廻る若い娘を見て、しばらくは手の下しようもありませんでした。気管から頸動脈へかけて掻き斬られ、親の久兵衛夫婦が駆けつけた時は、もう口をきくどころの沙汰ではなく、下手人の名も言わず、半狂乱の母のお夏の膝に抱かれて、そのままこと切れたのでした。

平次とガラッ八が駆けつけたのは、それから四半刻(三十分)ばかり経ってからで、取りあえず桶屋の奥へ担ぎ込んだお民の死体を見せて貰いました。