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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(二)八人芸の女
野村 胡堂
線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(二)八人芸の女(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 144,562 字 · 291 頁
五
五
「何だ何だ」
「また化物が暴れ出したのか」
「それ行ってみろ」
母屋から五六人、心張棒、天秤棒から、長押の槍まで持出して、バラバラと飛んで来ました。夜は明けかけている上に、多勢となると、馬鹿に威勢がよかったのです。
「おや、旦那」
「平次親分も」
そこに展開された、不思議な事件に、飛出して来た奉公人達も、しばらくは呆気に取られるばかり。
「大急ぎで灯を持って来てくれ」
主人の由兵衛はようやく我に還ると、早速差図役に廻ります。大立廻りの時龕灯は消えて、薄明るい暁の光では、井戸の中までは見えなかったのです。
「ヘエ――」
持って来たのは提灯と手燭と、有明の行灯、掘り下げた井戸の三方から一ぺんに差出されました。
凄まじい好奇心が、口火を転じた煙硝のように燃え上がります。
「あッ」
驚きの声が、多勢の口を衝いて出ました。井戸の底にあるのは、――燦たる大判小判?――いやそんな生優しいものではありません。薄黒い着物に包まれた骸骨、――黄灰色に濁った、世にも浅ましい人間の死骸だったのです。
「わッ」
番頭達も、主人の由兵衛も、思わず弾き飛ばされたように飛退きました。先刻井戸の中の青髯が悲鳴を挙げて這い出そうとしたのも、全く無理はありません。