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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(二)八人芸の女

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(二)八人芸の女(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 144,562 字 · 291 頁

青空文庫

五

これも禿筆の走り書で、――先刻の礼を言って、薬を送る――とあるだけ、かなりの達筆ですが、薬という字の艸冠を忘れて、楽となっているのは、愛嬌です。

「親分、――御用は?」

そこへ疾風のごとく飛込んで来たのが、ガラッ八の八五郎でした。

「八、ちょうどいいところだ。田原屋へ行って、主人がどんな顔をしているか、探って来い。それからこれも町内だ。石橋屋の久助と丸屋の源吉が、宵から何をしたか捜るんだ」

「お易い御用だ」

「安請合をするな、そのうちの一人が、人殺しの下手人かも知れないぞ」

「えッ、人殺し?」

「だから油断をしちゃならねえ。俺はここに捜してみたいことがうんとある。――これだけ器用な細工をされちゃ、時が経つと解らなくなる。抜かるな、八」

「へッ、憚りながら八五郎兄さんだ。抜かるのは親分の前だが、銭形の御屋敷の路地だけで――」

「馬鹿野郎ッ」

「有難えな、――その馬鹿野郎ッ――てえのを聴かないと、仕事のきっかけがねえ」

ガラッ八はそんな事を言いながら、気軽に飛んで行きました。

五

離屋へ帰って来ると、娘のお吉は死骸に取縋って、少し調子っ外れに泣き喚き、婿の儀八は苦り切ってそれを眺め、番頭の新兵衛は、ただおろおろするばかりで、取止めもありません。