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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(二)八人芸の女

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(二)八人芸の女(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 144,562 字 · 291 頁

青空文庫

平次はそんな事まで気を配りました。

「ヘエ、御新造様は、すすめ上手で、ヘエ」

元が元だから――と言いたそうなのを、平次は見て取らずにいません。

不意に泊り込んだ奉公人に、二本の酒を振舞うのは、お妾気質の大気がさせるにしても、少し御馳走が過ぎます。

その晩お咲は、何か企む気でもあったのでしょうか、平次は万七と顔を見合せました。その時、

「外は往来だ。江戸中は愚か、京までも長崎までも続きますぜ。親分」

ガラッ八はそんな事を言いながら帰って来たのです。

「長崎から人殺しが来るかよ。馬鹿野郎」

「ヘエ――」

「近所にどんな家がある」

「裏の方は荒物屋に酒屋に、畳屋、それからしもたやが二三軒、寮が二つ三つ」

「表は?」

「匕首を背負った犬は表なんかへ逃げはしなかったでしょう」

「犬が匕首なんか背負って逃げるものか。先刻から考えていたんだが、匕首はその沓脱の後ろに、打ち込んであるよ」

「ヘエ――」

ガラッ八はいきなり縁と沓脱の御影石の間に首を突っ込みました。

「あるだろう」

「あったッ――親分は見透しだね。沓脱の後ろを引っ掻くと、柔らかい土の中へ柄先を一寸も打ち込んでありましたよ。