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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(二)八人芸の女
野村 胡堂
線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(二)八人芸の女(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 144,562 字 · 291 頁
提灯があったら貸して貰いたいが」
「ヘエ」
竹の市は家の中をモゾモゾやっておりましたが、やがて、小田原提灯一つと、鼠の喰い欠いた蝋燭が一と塊り、それに、火打道具を添えて持って来ました。
「有難う、眼の不自由な人にしちゃ良いたしなみだね、――お前さん配偶は?」
平次は火打鎌を鳴らしながら訊きます。
「そんなものはありゃしません。貧乏な按摩のところへ誰が来てくれるものですか」
「そうじゃあるまい、お前さん、とんだ金を残していると言うじゃないか」
「世間じゃそんな事も言うそうですが、とんでもない話で、金がありゃ、人様の足腰なんか揉んでいるものですか、盲目相応の出世でも致しますよ」
平次の誘いに引っ掛るともなく、謙遜するうちにも、まんざら溜めていないでもない口吻です。
「三度の世話は」
「町内の糊売婆さんが来て拵えてくれますよ」
平次はようやく提灯に灯を入れて、竹の市の世帯へ一と通り眼を通しました。表構えよりは小綺麗で、世帯道具も一と通り揃っておりますが、家の中はひどく乱雑で足の踏み場もないといった感じです。
「お前さんは幾つから眼が悪くなったんだえ」
と平次。
「中年からの盲目で、感が悪くて困ります」