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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(二)八人芸の女

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(二)八人芸の女(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 144,562 字 · 291 頁

青空文庫

ね、お喜多、言いにくいこともあるだろうが、諸人のために洗いざらい話してくれ」

「…………」

お喜多はおどおどした瞳を上げました。名題の鉄火者も、恥多い自分の姿を振り返って、さすがに口を緘みます。

「第一に聴きたいのは、綾吉とはいつ頃から親しくなったか、昨夜はどんな話をして別れたか――」

平次の問はかなり突っ込んだものでしたが、観念し切った様子で、お喜多は思いの外スラスラと話して行きました。

その話というのは、――

綾吉は名題の性悪男で、地紙売を商売にしながら、何人となく女を拵えました。不思議な魅力の持主というものでしょう、憎らしい憎らしいと思いながら、強か者のお喜多も、誘惑された一人だったのです。

表通りは人目が多いので、墓場の中を通って綾吉の長屋へ通ううち、臆病な人に見つかって、幽霊と間違えられたのが、ひどくお喜多の好奇心を嗾りました。大の男が蘭塔場の中で物の見事に腰を抜かす図は、お転婆で気象者で、物好きで人の悪いお喜多にとっては、何とも言いようのない面白い観物だったのです。

一つは、自分の忍ぶ恋路の邪魔をされないために、お喜多は進んで幽霊になりすまし、青い紙を貼ったブラ提灯や、鬘や鼠色の長い単衣を用意して、若い男達を脅かして、変態的な喜びにひたっていたのでした。