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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(二)八人芸の女

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(二)八人芸の女(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 144,562 字 · 291 頁

青空文庫

「また鼻かい、親分」

「怒るなよ。八、お前の鼻がよく利くから、俺の仕事が運ぶんだ、平次の手柄の半分は、言わば八五郎の鼻の御蔭さ。今度お目にかかったら、笹野の旦那に申上げておこう」

「冗談じゃねえ」

「ところで、あの足音だ、――後金の緩んだ雪駄を引摺り加減に歩くところは、女や武家や職人じゃねえ、落魄れた能役者でなきゃアまず思案に余ったお店者だ」

「…………」

縁側に寝そべって、路地の外の人間を透視する平次の話を、八五郎は小鼻を膨らませて聴き入りました。

「先刻から格子を開けかけて、三度も引返しているよ。大の男があれほど迷うのは、よくよくの事があるんだね」

「行ってみましょうか、親分、――文句を言ったら、力ずくで引張り込む」

「そんな事をしちゃブチ壊しだ。そうでなくてさえ、迷い抜いているんだ。うっかり声を掛けると、逃げ出さないまでも、用心深くなって、田螺みたいに口を緘むに決っている、――知らん顔をしているんだ」

「…………」

「それ格子を開けたろう、お静が出て行った様子だ。放っておけ放っておけ、――精一杯知らん顔をして、お前さんの話なんか、少しも聞きたくない、って顔をするんだよ、解ったか、出しゃ張ッちゃならねえ」