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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(二)八人芸の女
野村 胡堂
線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(二)八人芸の女(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 144,562 字 · 291 頁
裏二階の下で、納屋の蔭などへ、大店の主人が入るのは可怪しいじゃありませんか」
と平次。
「ヘエ、私にも一向合点が参りません」
徳三郎はこんな事を訊かれると、首筋を掻いて尻込みばかりしております。
「みんな申上げた方がいいよ、徳三郎どん。――ね親分、主人の恥になることだが、隠したって隠し切れるものじゃねえ、みんな言ってしまいますが、――主人の総七は半年この方独り者で、道楽は強いが女には弱い方でした。何の因果か、菊之助の女房のこのお粂に誘われて――」
「お黙り。叔父さん面をさしておけば良い気になって、私がいつ御主人を誘ったえ、畜生ッ」
お粂はまたいきり立ちます。
「――誘われてと言って悪きゃア、気があってと――としてもいい。とにかく、菊之助が留守になって、お粂が稽古事から帰って来る頃を見測らっては、この二階の下へやって来ましたよ。大店の主人が、みっともない話ですが、表や家の中は人目が多いから、さすがにヌケヌケとお粂の部屋へも入れなかったのでしょう。死んだ者の悪口を言うんじゃないが、本当に仕様のない男で――」
叔父勝造の話は恐らく本当でしょう、その場に居る十人あまり一人も口を出す者もありません。