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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(二)八人芸の女
野村 胡堂
線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(二)八人芸の女(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 144,562 字 · 291 頁
「その忘れ物を、夜中に取りに来たんだろう」
「ヘエ――御察しの通りで」
佐吉は舌を捲きました。渡世や商売にしても、平次の気の廻るのに驚いたのです。
「よくある術だ、――それから」
「かれこれ丑刻半(三時)、どうかしたら、寅刻(四時)――近かったかも判りません。表の戸をそっと叩く者があります。店に寝ていた小僧が起きて、臆病窓から覗くと、若い娘が月の光に照されて、濡れたような姿でションボリ立っていたんだそうでございます。声を掛けると、夕方買物に来た時、他所から借りた見本の帯を忘れて行ったような気がする。お店にあればいいが、もし途中で落しでもしたのなら、親に叱られるばかりでなく、母親の形見だという大事の品を借り出して、向うの方へも済まないから、生きて合せる顔はない――と言ったそうで」
「フーム、手が混んでいるな」
「あんまり気の毒なんで、手代を起して相談の上、表戸を開けて、忘れ物の帯を渡してやったんだそうでございます」
「何だって臆病窓から渡さなかったんだ」
と平次。
「私もそれを申しました。すると、親分さんの前だが、若い者というものは、仕様のないもので――」
「番頭さんには若い時がなかったようだネ」