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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(二)八人芸の女

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(二)八人芸の女(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 144,562 字 · 291 頁

青空文庫

「そのうちでも一番、睨み合ってるのは」

「千三つ屋の佐七ですよ。あの人は、娘のお染を滅茶滅茶にされたって、ひどく怨んでいるそうですが、それは無理ですよ。出羽屋の若旦那が、佐七の娘のお染より、私のお民坊が好きなら、仕方がないじゃありませんか」

「なるほど」

三崎町の佐七と言う、野幇間のような千三つ屋が、とんだ良い娘を持っていることや、その娘が、同じ町内の千両分限、米屋では神田でも屈指と言われた、出羽屋伝右衛門の倅伝次郎に見初められたとか、捨てられたとかいう話は薄々聞いております。

「ところで、一番親しいのは、――」

「主人と仲が善いと言っちゃ変ですが、何事も相談に乗って下さるのは、出羽屋の旦那ですよ。向うはあの大身代、こっちは店こそ持っていますが、いわば職人で、釣合わない事この上なしですが、妙に主人のとは気が合うものか、やれ来いそれ来いと言っちゃ、三日にあげず呼出されて、時々は世帯の方まで面倒を見て下さいます」

お夏は少し得意そうでした。

「…………」

平次は黙って先を促しました。お夏にとっては、物質的な援助までしてくれる出羽屋の伝右衛門は、神仏の次に有難い人だったのでしょう。