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みみずのたわこと
みみずのたはこと
徳冨 健次郎
線上閱讀徳冨 健次郎《みみずのたはこと(みみずのたわこと)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 265,437 字 · 530 頁
えな、と与右衛門さんが舌鼓うつ。下田の金さん宅では、去年は兄貴が抽籤で免れたが、今年は稲公が彼体格で、砲兵にとられることになった。当人は勇んで居るが、阿母が今から萎れて居る。
頓着なく日は立って行く。わかれ霜を気遣うたは昨日の様でも、最早春蝉が鳴き出して青葉の蔭がそゞろ恋しい日もある。詩人が歌う緑蔭幽草白花を点ずるの時節となって、畑の境には雪の様に卯の花が咲きこぼれる。林端には白いエゴの花がこぼれる。田川の畔には、花茨が芳しく咲き乱れる。然し見かえる者はない。大切の大切のお蚕様が大きくなって居るのだ。然し月の中に一度雹祭だけは屹度鎮守の宮でする。甲武の山近い三多摩の地は、甲府の盆地から発生する低気圧が東京湾へぬける通路に当って居るので、雹や雷雨は名物である。秋の風もだが、春暮初夏の雹が殊に恐ろしいものになって居る。雹の通る路筋はほゞきまって居る。大抵上流地から多摩川に沿うて下り、此辺の村を掠めて、東南に過ぎて行く。既に五年前も成人の拳大の恐ろしい雹を降らした。一昨年も唯十分か十五分の間に地が白くなる程降って、場所によっては大麦小麦は種も残さず、桑、茶、其外青物一切全滅した処もある。