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みみずのたわこと

みみずのたはこと

徳冨 健次郎

線上閱讀徳冨 健次郎《みみずのたはこと(みみずのたわこと)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 265,437 字 · 530 頁

青空文庫

と胡魔化した。宮前のお広さん処は、始終諸君が入り浸る其賭博の巣なのである。主の彼は可笑しさを堪え、素知らぬ振して、宮前のお広さん処へは、其処の墓地に傍うて、ずッと往って、と馬鹿叮嚀に教えてやった。「へえ、ありがとうございます」と云って、舌でも出したらしい気はいであった。門戸あけっぱなしで、人近く自然に近く生活すると、色々の薄気味わるい経験もした。ある時彼が縁に背向けて読書して居ると、後に撞と物が落ちた。彼はふりかえって大きな青大将を見た。葺きっぱなしの屋根裏の竹に絡んで衣を脱ぐ拍子に滑り落ちたのである。今一尺縁へ出て居たら、正しく彼が頭上に蛇が降るところであった。

人烟稀薄な武蔵野は、桜が咲いてもまだ中々寒かった。中塗もせぬ荒壁は恣に崩れ落ち、床の下は吹き通し、唐紙障子も足らぬがちの家の内は、火鉢の火位で寒さは防げなかった。農家の冬は大きな炉が命である。農家の屋内生活に属する一切の趣味は炉辺に群がると云っても好い。炉の焚火、自在の鍋は、彼が田園生活の重なる誘因であった。然し彼が吾有にした十五坪の此草舎には、小さな炉は一坪足らぬ板の間に切ってあったが、周囲が狭くて三人とは座れなかった。