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みみずのたわこと
みみずのたはこと
徳冨 健次郎
線上閱讀徳冨 健次郎《みみずのたはこと(みみずのたわこと)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 265,437 字 · 530 頁
雨あがりの漁場、唯もう腥い、腥い。静海亭に荷物を下ろすと、宿の下駄傘を借り、車で勿来関址見物に出かける。
町はずれの隧道を、常陸から入って磐城に出た。大波小波々と打寄する淋しい浜街道を少し往って、唯有る茶店で車を下りた。奈古曾の石碑の刷物、松や貝の化石、画はがきなど売って居る。車夫に鶴子を負ってもらい、余等は滑る足元に気をつけ/\鉄道線路を踏切って、山田の畔を関跡の方へと上る。道も狭に散るの歌に因んで、芳野桜を沢山植えてある。若木ばかりだ。路、山に入って、萩、女郎花、地楡、桔梗、苅萱、今を盛りの満山の秋を踏み分けて上る。車夫が折ってくれた色濃い桔梗の一枝を鶴子は握って負られて行く。
浜街道の茶店から十丁程上ると、関の址に来た。馬の脊の様な狭い山の上のやゝ平凹になった鞍部、八幡太郎弓かけの松、鞍かけの松、など云う老大な赤松黒松が十四五本、太平洋の風に吹かれて、翠の梢に颯々の音を立てゝ居る。五六百年の物では無い。松の外に格別古い物はない。石碑は嘉永のものである。茶屋がけがしてあるが、夏過ぎた今日、もとより遊人の影も無く、茶博士も居ない。弓弭の清水を掬んで、弓かけ松の下に立って眺める。