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なんごくたいへいき
南国太平記
直木 三十五
線上閱讀直木 三十五《南国太平記(なんごくたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 493,291 字 · 991 頁
「溜飲は下ったが、常公、睾丸がちぢみ上っちまったぞ。血だらけの面をして、眼を剥きあがって」
人々が、笑いかけた時、表口に集まっている人々の背へ、眼をくれながら、益満休之助が、傘を傾けて、急ぎ脚に、通って行った。
玄関脇の部屋で、又蔵が、古着屋を相手に、いくらかでも高く売ろうと、押問答をしていた。
綱手と、深雪とが、七瀬が、旅着と、その着更のほか、白無垢まで持ち出してしまったので、新調の振袖も、総刺繍の打掛も、京染の帯も、惜しんでおれなかった。
「これは、二度着たっきり――」
綱手は、甚三紅の絞りになった着物を、肩へ当てて、妹に見せた。深雪は、涙ぐみながら、大久保小紋の正月着、浮織の帯、小太夫鹿子の長襦袢、朧染の振袖と、つづらから出して、積み上げた。
七瀬は、夫の着物を出して、えり分けた。八郎太は「道中細見」の折本を披げて、大阪までの日数、入費などを、書き込んでいた。
「十五両? 馬鹿申せっ、人の足許へ付け込んで。この素ちょろこ町人め。又蔵、日影町へ一っ走りして、もそっと人間らしいのを五六人呼んで来い。わしが売ってやる」
益満が、大きい声を出していた。