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なんごくたいへいき

南国太平記

直木 三十五

線上閱讀直木 三十五《南国太平記(なんごくたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 493,291 字 · 991 頁

青空文庫

「只今、参るが――油断できぬ」

と、八郎太が、下から叫んで、すぐ、表の入口へ廻ったらしく、下の女達の

「お越しなされませ」

と、叫んでいる声が、聞えた。

「油断できぬ、と――嗅ぎつけよったかな」

名越が、呟いた。小さい女が、階段のところへ、首だけ出して

「お二人、お見えになりました」

と、いった時、八郎太と、小太郎とが、広い、黒く光る階段を、登って来た。そして

「手が、廻っておるらしい」

と、低く、鋭く、叫んで、ずかずかと、人々の方へ来た。

「手が?」

八郎太も、小太郎も、興奮して、光った眼をし、袖も、肩も、裾も、濡れていた。八郎太が、座へつくと、小太郎は、益満の後方へ坐って

「遅参致しまして、相済みませぬ」

と、平伏した。

「それで、手が、廻ったとは?」

「丁度、不動堂の横――安養院の木立のところで、仙波と、呼び止めた奴があった」

人々は、仙波を、目で取巻いた。

「顔は、この暗さで判らぬ。声も覚えはないが、わしと知って呼び止めた以上、蹤けて来たのであろうか? 前から、忍んでおったのでは、判る理前が無い」

人々が、頷いた。

「それで、誰だ、と、こっちから咎めた」

人々が