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なんごくたいへいき
南国太平記
直木 三十五
線上閱讀直木 三十五《南国太平記(なんごくたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 493,291 字 · 991 頁
仲太郎は、沈香を取って、焔の上から振りかけた。そして、じっと凝視めていたが、小さい火が、ぼっと、立っただけで、何んの匂もしなかった。仲太郎は、眼を閉じて、俯向いた。そして、指を組んだまま、暫く、身動きもしなかった。
護摩木が、だんだん燃えつくしてきて、焔も、煙も、小さく、薄くなってきたが、仲太郎は、まだ、瞑目したままであった。
部屋の隅に坐っていた、黒衣をつけた二人の家来が、互に眼を見合せてから、ちらっと、仲太郎を見た。それと同時に、お由羅も、珠数を、左右へ劇しく振って、眼を開いた。そして、首を一寸、曲げて、火炉の中の火の消えかかっているのと、仲太郎の姿とを眺めて、家来の方を見た。家来も、お由羅を見て、眼が合った。暫く、三人は、仲太郎を、じっと凝視めていたが
「先生」
と、お由羅が、声をかけた。だが、仲太郎は、俯向いたままであった。お由羅も、黙っていた。
炉の中の火は、すっかり消えて、残り火が、ほのかに明るいだけであった。部屋の中の、薄い煙は、戸惑いしたように、天井を、襖の上をうろついているだけで、画像の姿も、朧げにしか見えなくなった。
「先生――如何なされました」