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なんごくたいへいき
南国太平記
直木 三十五
線上閱讀直木 三十五《南国太平記(なんごくたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 493,291 字 · 991 頁
お由羅が、こういうと、仲太郎は、静かに首を上げた。そして、黙って、壇を滑り降りて、沈鬱な顔をしながら
「暫く、行を廃すと致しましょう」
「ま――何んと、なされました」
牧は、青衣を、静かに脱いで、家来に渡しながら
「恩師の、逆修がござります」
「加治木玄白の?」
「左様」
牧は、そう答えて
「行け」
と、二人の家来に、顎で指図した。二人の家来は、襖を開けて、次の間へ去った。煙が、二人を追うように、出て行った。牧は、壇のところへ立ったまま
「祈って、祈れぬことはござりませぬ。さりながら――」
首を傾けて、暫く、無言であった。
「さりながら?」
と、お由羅は、催促した。
「さりながら、ここで、某、精魂を傾けますと、恩師の命を縮めまする」
「玄白の?」
「左様」
「それで?」
牧は、お由羅を、正面から、睨みつけるように、鋭く見下ろした。お由羅も、同じように、見上げた。
そのお由羅の眼の中には、いつものお由羅のやさしさが消えて、女性のもっている悪魔の性質が、獣の精神と、一緒になって、光っているような感じのする凄さが、現れていた。
「憚りなく、申せば――某修法を行う前に、申し上げたる如く、仮令、御幼少の方とは申せ、某にとっては、天地に代え難き、御主君にござりまする。