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なんごくたいへいき

南国太平記

直木 三十五

線上閱讀直木 三十五《南国太平記(なんごくたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 493,291 字 · 991 頁

青空文庫

そろりそろりと参られましょうで、四国町へ行く内にゃあ、日が暮れらあ」

小藤次は、人が来ると、すぐ、澄まし返って、武士らしくなった。深雪は

(とにかく、邸は出たが、このまま小藤次の家へ行けば、邸の内で押込めに逢っていたよりも、危い)

と、思った。だが、何もすることもできなかった。曇った心の中に、四国町の街景色、小藤次の家、薩摩屋敷、自分の住家などが、幻になって、浮き、沈みした。

(行けば、又、何んとか、その場逃れのことをいって――それに、南玉の家にも、庄吉のところにも近いし――)

そう思うと、この近くの何っかから、庄吉が、自分が、こうしているのを、見ているように思えた。

(親切な庄吉――)

深雪は、四国町の近くから、四国町を、なるだけ、ゆっくりと歩いていたなら、きっと、南玉か、庄吉かに見つかるであろう、二人が見ないでも、誰かが見て、二人に話をしてくれるであろう、二人が聞いたなら、何んとかしてくれるにちがいない、それが、その夜の出来事になるか、二日目になるか? 何うしてくれるか、判らないが――それまで、小藤次を防いでいたら――と、思った。だが、万一の時、何うして、小藤次の手を、振切るかを考えると、身体中が、寒くなってきた。