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なんごくたいへいき

南国太平記

直木 三十五

線上閱讀直木 三十五《南国太平記(なんごくたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 493,291 字 · 991 頁

青空文庫

往来の人々は、走って行く駕と、人とを見較べて

(何か急用か、大事であろう)

と、見送っていた。益満は、駕脇を走りながら

「何んと、小藤次殿」

と、振向いた。

「ええ?」

「琴平、舟々って唄を、御存じかな」

琴平、舟々、追手に帆かけて

ひゅら、ひゅっ、ひゅっ

廻れば、讃州、阿呆のごとく

琴平、小藤次は、大工上り

「如何でござるな」

真平、御免御免

お尻に帆かけて

ひゅら

ひゅっ、ひゅっ、ひゅっ

益満は、その唄に合せて、尻を、左右へ、ひょこひょこと振った。深雪は、駕の中から、それを見て、袖を噛みしめて、俯向いた。駕屋が、声を立てて笑った。

小藤次は、益満の人間と、手並とを、人の噂に聞いてはいたが、その突飛な振舞を、何んと考えていいか、判断がつかぬし、その人を馬鹿にした、益満の後方から、従いて行く、自分のことを考えると、一体何う処置していいのか、判らなくなってきた。口惜しさと、憤りとの上を、擽ったく撫でられているようで、何処までついて行くのか? 何処で離れていいのか? 一体離れたものか、このまま益満の行くところまで、ついて行くのか、ついて行ったなら何うなるのか、離れてしまったなら、深雪は何うなるか?――