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なんごくたいへいき
南国太平記
直木 三十五
線上閱讀直木 三十五《南国太平記(なんごくたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 493,291 字 · 991 頁
(畜生め、一番、後方から斬ってやろうか)
とも、考えたが、それは考えただけであった。
「何うじゃな。上手であろうがな。ひゅっ、ひゅっ、ひゅっ、ひゅっ」
益満が、又、尻を振った。小藤次は、汗を滲ませて、刀を片手で押えながら、呼吸を荒くして走っていた。
「そこを左へ」
益満が、駕屋へ指図した。左へ折れると、片側は、寺で、片側は、草原であった。
「原を突切って」
駕屋が、
「井戸へ気をつけろ」
と、叫んだ。益満が
「この辺は、夜、追剥が出るでのう」
「へい」
「昼間、人を斬っても、その古井戸へ投げ込んでおいたなら、判るまい」
「そりゃ、知れっこありませんや」
益満は、小藤次へ、一寸振向いて、じろっと睨んだ。そして
「よし、ここで、ぶった斬ってくれる」
と、呟いた。小藤次は、周章てて立止まった。そして、汗を拭いた。駕も、益満も、どんどん走っていた。
(計られた)
と、思うと、恐怖心と、口惜しさとが、混乱した。小藤次は、離れて行く駕の後方を睨んでいたが、
(ここで見失っても手を分けて探せば、居所ぐらいは――)
と、思った。駕も、益満も、もう小半町近く離れてしまった。そして、ゆるゆる歩んでいた。