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なんごくたいへいき

南国太平記

直木 三十五

線上閱讀直木 三十五《南国太平記(なんごくたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 493,291 字 · 991 頁

青空文庫

と、思うと、自分の身体を、泥の中へ抛げつけたいように感じた。

(神官は、矢張り神官だ。武士とちがって、いざとなると、おくれた振舞をする)

と、思われるのが、口惜しかった。追って来る侍に

(わしは、卑怯で、逃げるのではないぞ)

と、怒鳴りたかった。そして、その侍が、自分の気持さえわかってくれたなら、潔く、首を渡してやってもいい、と思った。だが、そんなことを思いながらも、心の底では

(死んだって、福岡まで)

と、絶叫していた。

「おーい」

少し、後方から、腹に疵を受けた一人の方が、呼んでいた。だが、出雲を迫って来る侍は、答えなかった。ただ、足音だけが、だんだん、近く迫って来ていた。

夜の雪空は、暗い低さで、積った雪あかりに、やっと、道は見えていたが、急な曲り角になると、田圃の中へ、飛び込みそうになっては、危く身を躱して、走らなくてはならなかった。出雲守は、脚が動かなくなるか、呼吸が切れるか、何っちかだ、と思った。そして、走りながら、眼を閉じた時、その急な曲り角へ、又、走りかかっていた。そして、眼を開いた時

(しまった)

と、頭の中を、一掴みにされたように、感じた。