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なんごくたいへいき
南国太平記
直木 三十五
線上閱讀直木 三十五《南国太平記(なんごくたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 493,291 字 · 991 頁
走って来た勢いで、もう、踏み止まれなかった。そして、踏み止まれないと同時に、もし踏み止まったなら、追手の手にかかるのが、明らかであった。出雲守は
(しまった)
と、頭の中で、絶望的に叫んだが、その瞬間、身体も、脚も、本能的に、全力を挙げて、前へ飛んでいた。それは、追手から逃げようとする一念が、咄嗟の内に、そうさせたのであった。
がばっ、という音と一緒に、出雲守は、泥田の中へ、前のめりに、両手を突き出して、飛び込んでいた。両脚が、膝のところまで、泥の中へめり込んだ。両手は、前へ延びたまま――泥水を、跳ね上げて、脚と同じように泥の中へ突っ込んだ。顔も、胸も――そして、脚の底は、泥の中へ吸いついて
(逃げなければ――)
と、思っても、動かなかった。出雲守が、落込むと同時に
「あっ」
と、いう叫び声がした。追手は、泥田の間際で、踏み止まろうとしたが、はずみで、片脚を、田の中へ滑り込ませて、身体を反らした途端、泥道へ尻餅をついてしまったのであった。だが、すぐ、起き上って
「待てっ」
と、叫んだ。
出雲守は、右脚を持ち上げると、左脚が少し、泥深く入るし、左脚を持ち上げると、右脚の、にえ込むのに、憤りの涙が、出て来そうになっていたが