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なんごくたいへいき
南国太平記
直木 三十五
線上閱讀直木 三十五《南国太平記(なんごくたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 493,291 字 · 991 頁
吉が、その中を、静かに出て行くと、足早に、露路の中へ、入ってしまった。町人は、細い紐を、ぐるぐる巻きつけてある紙入を、足下から拾って、懐中して
「何うも、皆さん、お騒がせ致しまして」
と、群集にお叩頭した。
「まあ、よかった」
と、一人が云った。庄吉は、微笑して
「本当に、よかった」
と、云った。一人が
「もしもし」
と、町人の歩きかけたのを、呼びとめて
「中を改めてみんと、お前さん」
と、注意した。
「ああ、何うも――」
と、町人が周章てて、紙入を出して、中を覗くと
「いけないっ――彼奴、何処へ行った。畜生っ」
と、叫んで、群集の中を、掻き分けて、出て行こうとした。二三人が
「何処へ行きゃがったんだろう」
と、四方を見廻した。庄吉は、ぶらぶら歩きながら
「吉公、何処へ行った。油買いに、酢買いに、か」
と、呟いた。
(吉の奴――度胸もできたし、腕も、ようなったわい)
庄吉は、すっかり安心して、微笑すると同時に
(いい兄弟分を、持った)
と、思った。吉松の入った袋露路には、仲間の一人がいて、隣町へ、すぐ抜けられるようになっていた。そして、そこへ逃げ込んだなら、何処へ抜けて、何処へ落ちつくか、それは、仲間の約束が定まっていた。