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なんごくたいへいき

南国太平記

直木 三十五

線上閱讀直木 三十五《南国太平記(なんごくたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 493,291 字 · 991 頁

青空文庫

「又、急に――」

と、益満の方へ、膝を向けた。

「一月、膝っ小僧と、寝てりゃいいんだ」

「いやだよ――妾ゃ。厭だよ」

富士春は、煙管へ手を延して、煙草をつめかけた。一人が

「三人では、然し、心細いの」

「同志は、いくらもある」

益満は、富士春のつんとした顔へ、笑いながら

「此奴との流しも、いざといえば、こういう時のためと、人の勝手元から、家内の模様を見ておいたが、案外早く、役に立つ時が参った」

「そりゃ、何んの話だえ」

「女、童の知ることでない」

「変な台詞、よしておくれよ――妾ゃ、厭だよ――何処まででも、くっついて行くよ」

「それもよかろう」

益満は、そう笑って

「それでは、上方への路銀を、一つ、名越で、いたぶって来るかな」

と、呟いた。

「お前さん」

と、富士春が言葉を鋭くして

「妾を、棄てるつもりなのかい?」

「時と場合、義理と道理とによりましてはな」

「妾ゃ、戯談にいってるのじゃないよ。庄吉に――棄てられて、又――」

富士春は、涙声になっていた。

「ささ、その嘆きも御尤も」

益満が、仮声をつかった。二人の浪人は、腕組をして、天井を眺めていた。

「た、たよりないったら――お前も、茶化してばかりいて、頼りないし、妾ゃ――妾ゃ、この齢で――」