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なんごくたいへいき
南国太平記
直木 三十五
線上閱讀直木 三十五《南国太平記(なんごくたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 493,291 字 · 991 頁
そういうと、袖を目へ当てて、泣きじゃくった。一人が
「お春さん――益満は、そんな、薄情者じゃない。安心して――」
「頼りのうて――この齢をして、これから先、何うなるかと思うと――心細うて」
「わしも、金が無うて、心細うて――」
益満は、富士春の真似をして
「あったら、白粉を、三文方台なしにして――はい、行って参じます」
と、富士春の側を通って、出ようとした。富士春が
「お前さん」
と、延す手を、素早く避けて
「金を、小判というものを、たんと土産に致します。泣かずに待っていやしゃんせ、チチントンシャン」
と、唄いながら、出て行ってしまった。
同じ道に
斉興公の供の中へ加わって、京都の藩邸へ着いた月丸は、湯から上ると、庭へ出て、月を眺めていた。
(わしの地位として、齢として、手柄は十分に立てた。然し――)
月丸は、月の明りの中に、黒々と聳えている叡山を見て
(綱手を、手にかけて――それから、七瀬も――)
と、思うと、初めて契った叡山の夜が、悔恨と、なつかしさとを混えて、想い出されてきた。
庭の立木の、朦朧としたのが、何んとなく、二人の怨念を含んでいるように感じられた。