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なんごくたいへいき
南国太平記
直木 三十五
線上閱讀直木 三十五《南国太平記(なんごくたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 493,291 字 · 991 頁
八郎太は、むずかしい顔をしながら、じっと、箱を眺めていた。
「小柄」
七瀬が、刀懸から刀を取って、小柄を抜いた。八郎太は、箱の隙目へ小柄を挿し込んで、静かに力を入れた。四人は呼吸をつめて、じっと眺めた。ぎいっと、箱が軋ると、胸がどきんとした。
(調伏の人形でなかったら?――)
小太郎は、腋の下に、汗が出てきた。顔が、逆上せて来るようであった。釘づけの蓋が、少し開くと、八郎太は、小柄を逆にして、力を込めた。ぐぎっ、と音立てて、半分余り口が開いた。
白布に包まれた物が出て来た。八郎太は、静かに布をとった。五寸余りの素焼の泥人形――鼻の形、脣の形、それから、白い、大きい眼が、薄気味悪く剥き出していて、頭髪さえ描いてない、素地そのままの、泥人形であった。
人形の額に、梵字が書いてあって、胸と、腹と、脚と、手とに、朱で点を打ってあった。背の方を返すと、八郎太が
「ふむ――成る程」
と、うなずいて
「相違ない」
四人が、のぞき込むと、一行に、島津寛之助、行年四歳と書かれてあって、その周囲に、細かい梵字がすっかり寛之助を取巻いていた。
人形は、白い――というよりも、灰色がかった肌をして、眼を大きく、白く剥いて、丁度、寛之助の死体のように、かたく、大の字形をしていた。