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なんごくたいへいき
南国太平記
直木 三十五
線上閱讀直木 三十五《南国太平記(なんごくたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 493,291 字 · 991 頁
(頼みになるような、ならないような――今度、戻って来て――お春、俺は、薩摩屋敷へ入るぞ。お前は、何うなっとするがいい――いわないとも限らない台詞だ――それを、又、この浪人野郎共が、黙って聞いていて、挨拶一つしないのだろう、畜生――)
富士春は、柱によりかかって、脚を投げ出したまま
「犬、猫、畜生っ」
と、叫んだ。下の浪人達は、濁った声で、甲高い声で、議論をしたり、争ったりしていた。
(天下が何うだとか、黒船を焼くとか、何いってやがるんだい)
富士春は、そんなことを聞いても、見ても、判らなかったし、判ろうともしなかった。ただ、益満の手頼りなさと、耐えきれぬ夜の淋しさとに、袖を噛んだり、酒をのんだり、唄ったり――
(本当に――こっちの惚れる男は、浮気者だし、惚れてくる奴は、いけすかないし――)
と、思いながら――少し気が静まると
(早く、益公、戻れば、いいのに――戻ってさえくれりゃ――)
と、思いながら、柱へ、身体をすりつけて、投げ出した足を、しっかり締め合せて、自分の手で、自分の二の腕を、固く抱いてみた。
三つの死
「申し上げます」
書院の中は、浪人と、雑談と、煙とでいっぱいに、騒々しかった。